「腐日記」第二回/アレクセイ渡辺

2021年10月09日

腐日記10月1日
私は数年前から小説家になることを自覚的に目指している。
私が精神科病院に入院していた頃に私に謎の問いかけが深夜、あった。姿はみえず、ただ声だけが聞こえた。
お前は何をしたいのか?と。
私は反射的に答えた。
小説を書くことです、と。
それから退院すると、友達が仏様が夢の中現れ、私が東北随一の作家に成るだろう、というお告げがあったと言った。
私は喜んだ。が、それから数年経っても新人賞にさえ受かる気配さえない。友達は幻聴がひどくなり入院してしまった。
合理的に考えてこれは友達の幻聴だと判断するしかない。
世の中甘くない。

腐日記10月5日
しかし、仏様のお告げがただの幻聴だけだったとは考えたくないのも人情だ。今までそれなりに努力してきたことは何だったのだろうか。
仏教には方便という手立てが有る。
人を救うため、いわゆる手立てというものだ。
例えば、いまにも、焼き崩れる家で子供たちが気付かずに遊んでいる。
父親がベンツを買ってやるから、家から出てきなさい、と言う。
子供たちは喜んで家を出る。しかし、子供たちに与えられたのはクラウンだった。が、子供たちは救われた。
これが方便という手立てのひとつだ。
欲深い私への方便という手立ては何か?

腐日記10月6日
機動戦士ガンダムでニュータイプ理論をシャアのお父さんのジオン・ズム・ダイクンが唱えた。宇宙に進出した人類が進化するという理論。
私は資格武装論を30年くらい まえに唱えた。労働という局面では地力で劣る精障が健常者に対抗するためには資格で武装するしかないという理論。
20年法律の勉強をしたが、上手くいかなかった。なんの資格も取れなかった。運転免許さえも。
少なくとも私に関しては失敗だった。読者の中で皆さんの中で若い精神障害者が居るならば、私は私に関してはこの理論の失敗を認める。他の人にもおすすめしない。
よろしく。

腐日記10月8日
身体の衰えが辛い。最近、電話友達が亡くなった。彼は文芸批評家に成りたいと若い頃に言っていた。
名声や栄光とはどんな味がするのか?苦いか甘いか酸っぱいかしょっぱいか。
わからないのですが。
多分、甘いと思う。後に苦いか。私は小学校の習字の佳作ぐらいしか名声、栄光の類いを知らない。
のでわからない。












アレクセイ渡辺