「breed」ヒラノ

2021年12月21日

ジャポニズム、フランス、日の出、印象派...
今回は睡蓮等でお馴染みとなった印象派のアイコンとも言えるクロード・モネのお話をしたいので、どうかお付き合いください。

どの絵が一番好き?と言われると『日の出』とか『睡蓮』とか。あぁ、素敵ですよね。でも僕が好きなの彼が晩年に描き上げた『バラの小道、シヴェルニー』です。検索結果をご覧になっていただくと分かると思うのですが同タイトルでいわばプロトタイプと言うべき複数の作品が存在しており、その複数のプロトタイプを複合させた完成品が令和3年の夏に東京に来ていました。睡蓮もそうなのですがとにかく同じタイトルで描きまくるというイメージ。「睡蓮、見たことあるよ!」という話になってもそれが僕の見た絵と同じなのかは細かく擦り合わせをしないとわからないと思います。僕も2回は見ていたと思いますが、再度図録を確認してみたのですが「アレ?」と当の本人も困惑する始末。それはさておきモネの最高傑作は彼自身が作った「庭」とも言われています。菜園が趣味であったモネは熱心に「理想」の『庭』を目指し希少なバラを植え、池を掘り、睡蓮を浮かべ、それを描く、という作業を繰り返していたようです。さながら鉄道模型ファンがジオラマを作り、そこに鉄道模型を走らせ、今の時代なら動画で残す。そういう作業かもしれません。

んが...

モネの場合は裸の女性のモデルのポーズを「違う、そうじゃない...」「やっぱりこっちの方が良いかな?」「だから...あ!ありかも!」といじくりまわす、という方が正確な気がします。そのモデルのポージングが決まれば左から眺めたり、右から描いたり、正面に仁王立ちになったまま動かなかったり、何か小道具をもたせてみたり。何しろ花は生き物でモネの場合は花瓶に生けてあるそれとは違います。土深く根を伸ばし、複雑に絡み合っている。そして何よりも自身が手塩にかけて育てたモデルなのである。

突然ですが

あなたが詩人だとして、
ピアニストだとして、
彫刻家だとすると、

明日から両手が使えなくなるとわかった時、どうしますか?

モネが最初の睡蓮を発表したのが1903年、バラの小道の発表が1920年から。
この17年間の内に彼は白内障にかかっています。それも両眼ともに。彼は感覚の乱れを恐れ手術を断り続ける。

若い頃のモネの作品と見比べると一目瞭然で、色遣いが違う。素人の僕でもすぐに気づく位に。一言で言えばヒステリック。それでは済まないぐらいの狂気すら感じる。美術史上では白内障の症状により色の感じ方が変化している、とのことだそうですが僕に言わせると絶望を前にして泣き叫んでいる様に見える。僕の好きなバラの小道を描いているその時こそが時系列からいくとまさに佳境だったと。色を区別することが出来なくなりラベルを手掛かりにパレットに色を載せていたらしい。『バラの小道、シヴェルニー』、これ角度を変えてみたり距離をとったり近づいたりしてみると、例えばバラのシルエットが女性になっていたり、踊っている男性がいたり、奥にはカエル?何しろ大きな爬虫類がいたり。とにかくトリック満載であたかもホログラムを見せられているような気分になる。

「あんた、見えないんじゃなかったのか?」

言葉と隣の言葉との隙間、
行と行と存在する多元世界、
段落から段落への浮遊感、

突出した鋭利な「何か」
それが引っ掛かる
バラの棘?それかも
もっと見ろ、もう一度見ろと訴えかける
訴えかける?正確にはお前が見たいだけだろ?

ここは勝敗を決める場では無い
それが知りたければ中学でも高校でも良いさ
当時の自分を思い出してごらん





ヒラノ