「エレキング(ウルトラセブン)」角田寿星
なめらかなドレスの裾が
同心円をえがいて伸びていくその先はみずうみ。
繊維のゆらぎともつれは鏡面になりやがて背景を形成する。
みなもは泡立つだろう
花は瞬いてあわく色づくだろう
この星のうえで あたかも時間が
静かにながれているように感じたことだろう
雨はあがったがこの道は濡れたまま
わずかにぬめりを帯びている
遠雷は電子配列の相克ではなく
情報の勾配が織りなした いのちのささやき
もう気づいているだろう
頬を撫でる風も みずの色も
量子のひとつひとつには そんな性質など有りはしない
神々が執りおこなう賽子遊びの法則が
詳らかにされるならば偶然の堆積は雪崩となり
折り畳まれ不可視であったスピンがほどかれて
中心点目指してまっすぐ上がる水柱
あざやかな多重色彩のインフレーション
その時 ドレスは劇的にひるがえり
白く美しい怪獣が顕現する
エレキングは
このようにして生まれてきた
この星で真っ先に感知したのは
水分子のかぎりない透明
目も口も持たない宇宙怪獣には
いろどりとは光子のランダムな運動そのものだった
身の丈よりもながい尻尾がみずうみをかき回し
細胞をうるおす
まるで呼吸のような分子分解と酸化還元
放電 高濃度オゾンの放出
生きるよろこび
発声器官はあかるい音をかなでていた
このまま静謐のながれが訪れてくれるならば
ドレスの裾はどこまでひろがっていくだろう
ながい首を巡らせる 頭部の角がくるくるまわる
促されるように歩を進めるたび
みずうみは次々と光芒をはなち色調を変えてゆく
そもそもここが異郷の地であることに
気づいていただろうか
この星のことわりとは異なる系統樹に座するもの
この星の侵略を目的に
そのためだけにハイブリッドされた生物兵器
録画された相対的なそれが無慈悲に刻まれて
件のとおり怪獣はすぐさま消費される
いのちの時間さえ長いか短いか誰にもわからない
放電された電荷はエネルギーとなって
少なからぬ熱を周囲にあたえただろう
オゾンは上空へ向かわず酸素に戻っただろう
閉じてしまったドレスの裾は
量子のわずかな気まぐれをきっかけに
涼やかなひろがりをみせることだろう
