「仮想仮装」POGE

2026年05月05日

旅館の横町に
「相談に乗ります」

看板を掲げた
BARが
あった

とくに悩みが
あるわけでもなかったが
興味を引かれて
野次馬根性で
入ってみた

中はごちゃごちゃしていて
誰が客で
誰がマスターなのか
全くわからなかった

それぞれが
思い思いにしゃべっている

声の大きな
猫が
エロ話をするのはいいが
女の前だと
声色変えて
カッコつけるやつが
キモい
という

マスターらしき人は
基本的におっさんはキモい
と言う
客の一人が
何歳からがおっさんですか
食い気味に言う

16からおっさんだよ
何を言っているのか
わからない
あんたは何歳だ

仮想の世界に
年も性別もないだろう

美少女アバターはキモい
マスターは私を見て
そう言う

そうだろうか
そうなのだろう
キモいとは
言われなれている

ふにゃおすはキモい
男がくねくねして
媚びを売る姿が
うっとうしい
マスターは言う

そのとき
ふにゃおすと
グループバナーを表示した
少年アバターの人が
店に入ってきた

どうなるのだろうと
私はぼんやり眺めていた

マスターと
声の大きな猫が
ふにゃおすに絡んでいる

二人は
ふにゃおすの
プロフィールを見て
SNSのリンクが二つあり
片一方は普通で
片一方は成人仕様で
成人仕様のリンクは
貼るなよと
説教し始める

ふにゃおす氏は
飄々と説明する
私は年齢認証もしている
成人男性で
表のアカウントと
R18のアカウントを
使い分けています
とくに問題があるとは
思いません

猫と
マスターは
まだ絡む
二つも貼るな
子どもが
成人のほうを踏んだら
まずいだろう
パブリックで
そういうことをするな

私はうんざりしてきたので
人様のプロフィールをまじまじと見て
自分からリンクを踏みに行って
くどくど言うのはどうだろう
いやらしいですよ
そう言う

それでも
猫とマスターは
やいのやいのと
騒いでいる
ふにゃおす氏は
それを
黙って聞いている

私は切れた

マスターに向かって
お前の声はキモい
反吐が出るから
喋るな
俺はイケメンアバターが嫌いだ
ナルシストかよ
ここで一番キモいのはお前だ
頭も悪そうだし
マジキモい

私はドアを乱暴に開け
外に出た

仮想世界で
誰がキモいとか
馬鹿馬鹿しい
そもそも
人間なんて
全員キモい

仮想世界で
仮装する

外見の
美しさは
取り繕える

私は
キロバイトの海で
ミラーを見ながら
焚火の音を
ひとりで聞いている

誰もが
自由に
振舞える
世界で

心だけが
誰にも見えない









POGE

Share