「仮想仮装」POGE
旅館の横町に
「相談に乗ります」
と
看板を掲げた
BARが
あった
とくに悩みが
あるわけでもなかったが
興味を引かれて
野次馬根性で
入ってみた
中はごちゃごちゃしていて
誰が客で
誰がマスターなのか
全くわからなかった
それぞれが
思い思いにしゃべっている
声の大きな
猫が
エロ話をするのはいいが
女の前だと
声色変えて
カッコつけるやつが
キモい
という
マスターらしき人は
基本的におっさんはキモい
と言う
客の一人が
何歳からがおっさんですか
食い気味に言う
16からおっさんだよ
何を言っているのか
わからない
あんたは何歳だ
仮想の世界に
年も性別もないだろう
美少女アバターはキモい
マスターは私を見て
そう言う
そうだろうか
そうなのだろう
キモいとは
言われなれている
ふにゃおすはキモい
男がくねくねして
媚びを売る姿が
うっとうしい
マスターは言う
そのとき
ふにゃおすと
グループバナーを表示した
少年アバターの人が
店に入ってきた
どうなるのだろうと
私はぼんやり眺めていた
マスターと
声の大きな猫が
ふにゃおすに絡んでいる
二人は
ふにゃおすの
プロフィールを見て
SNSのリンクが二つあり
片一方は普通で
片一方は成人仕様で
成人仕様のリンクは
貼るなよと
説教し始める
ふにゃおす氏は
飄々と説明する
私は年齢認証もしている
成人男性で
表のアカウントと
R18のアカウントを
使い分けています
とくに問題があるとは
思いません
猫と
マスターは
まだ絡む
二つも貼るな
子どもが
成人のほうを踏んだら
まずいだろう
パブリックで
そういうことをするな
私はうんざりしてきたので
人様のプロフィールをまじまじと見て
自分からリンクを踏みに行って
くどくど言うのはどうだろう
いやらしいですよ
そう言う
それでも
猫とマスターは
やいのやいのと
騒いでいる
ふにゃおす氏は
それを
黙って聞いている
私は切れた
マスターに向かって
お前の声はキモい
反吐が出るから
喋るな
俺はイケメンアバターが嫌いだ
ナルシストかよ
ここで一番キモいのはお前だ
頭も悪そうだし
マジキモい
私はドアを乱暴に開け
外に出た
仮想世界で
誰がキモいとか
馬鹿馬鹿しい
そもそも
人間なんて
全員キモい
仮想世界で
仮装する
外見の
美しさは
取り繕える
私は
キロバイトの海で
ミラーを見ながら
焚火の音を
ひとりで聞いている
誰もが
自由に
振舞える
世界で
心だけが
誰にも見えない
