「ユメのセイ」あさとよしや

2022年06月24日

気がかりなユメからさめたとき 
コカンがへんにしめっているのをかんじた 
すこしチビったのかとおもった
休みじかんおわりかけのきょうしつでは
ドウきゅう生たちがどやどやと
まどの方へかけよってゆくので
どうしたのかとたずねてみる
こいつらみんななにもこたえず
みんながみんなまどにへばりついている 
しょく手をのばすやつもいる
まどの外にはあらあらしくナミだったウミがひろがっている
まわりのヤツラはウおうサおうしはじめる
みんないちようにみじたくをして
口々に「はやくウミへいこう」といいながら
さっさときょうしつから出ていった
だれもいなくなったきょうしつにいても
しかたがないので おれも下こうすることにした
チュウ車じょうには おれのマイカーがぽつんとたたずんでいる
外はぽかぽかよう気のドライブびより
とりあえずエンジンかけてラジオをながして
ウミへむかってマイカーをはしらせる
ウミへむかうどうろはじゅうたいしている
あちらこちらでクルマのクラクションがなりひびいている
みんないらいらしているのだ 
みんながみんなどうしたわけか 
ウミへいきたいのだ
どうろの先の方をみると 
おじさんがクルマからおりた
そしてウミへむかってはしりだした
そのうしろのクルマのカップルもおりた
やはりウミへむかってはしりだした
するともうあとはみんなおなじように
つぎつぎとクルマからおりて
ウミへむかってはしりだした
これではクルマはまるですすまない
しかたがないので 
おれもマイカーからおりてはしりだす
すこしはしって ふとたちどまる
ナミの しおさいの とどろきがヒビいてくる
なにかへんなのだ なにがへんなのだ へんなのはワカるのだが
それでもみんながみんな ウミへむかっていく 
だれもがしょく手をのばして ウミへむかっていく
そしてのまれていく あのウミに 
のまれたら そのままオキにはこばれる
もうもどってはこない タビだってゆく
それでもいますぐにでも のまれたいのだ あのウミに
みんなのまれたいのだ
おれだっていますぐにのまれたい あのウミに──

──気がかりなユメからさめたとき 
  コカンがへんにしめっているのをかんじた 
  すこしチビったのかとおもったが
  それはきっと ユメのセイだ
  休みじかんおわりかけのきょうしつでは
  ドウきゅう生たちがどやどやと
  まどの方へかけよってゆくので
  どうしたのかとたずねてみた










あさとよしや