「生きる」POGE

2021年11月12日

「生きる」

家賃を払って食費を計算すると
ほとんど金は残らない
ずっとそういう生活を送ってきたので
欲しい物がなくなってしまった
たまの贅沢は甘いものを食べるだけ
タバコを吸う本数も減らしている
服は着回しでサイズが合わなくなったり色があせたり
それでも特に困らない
作業着を着ていればいい 

詩を書いている
お金にはならない
でも書いている書いているときだけ生きているような気がする
多分、詩を書くことが人間らしさの
最後の砦なのだろう
蟹工船
あそこまでは厳しい生活ではない
ラオスの乞食
彼らのような元気はない
日々慎ましく生きているだけだ
欲も枯れてしまった 

同じアパートに住むお爺さん
タバコを吸うとき挨拶を交わす
彼は統合失調症で何年も入退院を繰り返し
今はこのアパートでひっそり暮らしているという
誰も会いに来ることもなく
楽しみは野球と相撲
自分は韓国の女としかヤッたことがない
しつこいくらいに何度も言い
掃除のおばさんにも嫌われている 

別に誰が悪いというわけではないのだろう
たまたま運が悪かっただけだ
運が悪いと言っても日本に生まれただけマシだろう
紛争もなく難民で溢れているわけでもなく
地雷も不発弾もない
ASEANにはそういうところが当たり前にある
虐待されているわけでもなく
イジメられているわけでもない 

遠くへ行きたいな、たまにふと思う
バンコクの熱気やラオスの屋台
少し懐かしくなる 

マルクスは飢えて働いたことがあるのだろうか
マルクスの想像したプロレタリアは理想球体のようなものではないか
資本論を全部読めばわかるのだろうか
資本論を買う金はないが
インテリの言うことはよくわからない 

好きだった女性のことを思う
彼女は裕福で部屋もきれいだった
釣り合わなかっただろう
別れて良かったのだ 

生活するだけの日々は魂を削っていく
時間は散漫に過ぎてゆく
毎日の労働も繰り返されるばかり 

私達は生きている
夢がなくても生きている
死なないために生きている

そう、死なないためだ 







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