みきくんこんばんは 六 すなけちゃん(snake)

2021年12月19日

 みきくんこんばんは 六

 二〇二二年からさかのぼること、一六年、スコットランドで英語の勉強が終わった私はイングランドへ移りました。スコットランドは国名ではなく国名はイングランドと同じイギリスです。元はスコットランドの王家があった国家でしたが、イングランドの女王にスコットランドの女王が殺されて統治されてしまいました。同じ国ですが小学校にあがる年齢や法律が異なります。 
 というわけでつまりは前に住んでいたアロアの町からイギリスの中で移動したということです。新しい町はノーザンプトンといい、古い工業地域で工場の多いところです。
 私は靴を作る学校へ入りました。靴を作る職業はなぜか日本では職人さんとかレザークラフトとか呼んだり格好が良いのですが、現地ではそんなに良い職業ではありません。工場は刺青だらけのお兄さんやおじさん、ハンマー叩きながらの掛け声がマザーファッカーとか言っています。
 学校では、木型やデザインの種類、デザイン、パターン、製造、と駆け足でたくさんのことを習いました。先生はリチャードというのですが、初日に「何か用事あればリチャードと叫べ」と言われました。言われた通り、「リチャード!」と叫ぶとすぐに来てくれます。そのずっと後の勤務先の社長チャールズも用事があるときは「チャールズ!」と叫べば良いのですが、今の会社で社長を「せいじ!」と叫んで呼んだら解雇されるだろうと思いますし、そんな勇気はありません。
 学校にある日パキスタン人のアザーがやってきました。家が靴工場らしく勉強しに来たとのこと。アザーはイスラム教でお祈りのわざわざモスクまで行くので長い時間帰ってきません。そして一日五回のお祈りと、金曜礼拝とで、朝は学校にいるのですがそのうちすぐにいなくなって、あんまりいませんでした。
 そんなアザーから妙なテキストメッセージが来るようになりました。その頃は携帯電話がありましたが通話以外には、テキストメッセージだけでした。
 アイラブユー、から始まり、何してるだとか、電話にどうして出ないのかとか。学校では直接会っても特に変なことは言ってこないのですが、電話では変なのです。恐ろしいので電話にも出ず返信もしませんでした。
 すると、僕が君を好きだから君は僕を愛す必要がある。とか、僕は君を選んだのでそういう運命なのだ、みたいな強烈な内容になってきました。
    結局、どうやってあのストーキングが終わったのか忘れてしまいましたが、しばらくの間とても怖い思いをしました。
    ノーザンプトンはロンドンから電車で五〇分くらいの町なので毎月ロンドンへ買い出しに行きました。マヨネーズは八百円しました。子供に学習させるため、小学二年生を買っていましたが一六〇〇円くらいしました。他にも和食が作れるような材料をいくらか買って帰りました。ロンドンは日本人がとても多くて地下鉄のどの車両にも必ず一人はいます。
    ロンドンが近いのでそこからさらに別の場所へ行ける旅先ができました。ユーロスターという電車に乗ると、海峡トンネルを通りすぐに大陸に行けます。ベルギーが一番手前にあって物価も安いのでたまに行きました。その中の観光地が好きで宮島みたいな感じでした。
    年越しをベルギーで過ごして正月にイギリスに帰ってきたらストライキでロンドン~ノーザンプトンの電車が全部キャンセルになっていました。夜に着いて夜知ったのでかなり絶望しました。そして、バスに乗って少しノーザンプトンへ近づき、夜中の二時くらいにノーザンプトンの一駅前くらいまでやっとたどり着き、そこで一時間次のバスを待って帰りました。めちゃくちゃ寒くて荷物もあって、子供もいて、バスを待つ間とても悲しかったです。ベルギーでの年越しカウントダウンは良かったです。街の広場に特設されたスケートリンクで大勢の人がカウントし、知らない間にシャンパングラスが配られて、知らない間にシャンパンを注がれて本当に気前が良いです。
    最近日本に二年半暮らして思う事があります。日本はちょっと気前が悪いです。どこに行っても「あれするな、これしろ」のご案内が基本です。
「●●はご遠慮くださいませ、●●の場合はあらかじめ●●してください」とか。住んでると普通に思うのでしょうが、百貨店だろうがバスだろうが、とにかく「あれしろこれすな」を繰り返します。そして小さなものもちまちまお金が必要です。広島だけかもしれません。けちくさいと思っています。
    書いていて思い出せばベルギーの年越しは素敵ですが、当時の私は日本で年越しできない悲しみが大きく、日本に住んでいないと紅白をみたり初詣に行くのは無理です。今は紅白を見る方法はたくさんありますが。今年も日本での年越しです。わくわくします。紅白の歌手の半分以上が誰だかわからなくても、みんなと同じことを普通にできるのは素晴らしくかけがえないことです。
 では、メリークリスマス!






すなけちゃん(snake)