小さな存在でしかないからこそ 奥主榮

小さな存在でしかないからこそ

僕は小さな存在で
君を見殺しにしてきた
そうやって
生きのびてくることが

僕は愚かな存在で
君を見ないことにしてきた
そうやって
生きていることができた
君がいることをないことに
そんなふうにしてきた僕は
立派に君を傷めつけてきた

君の痛みをないがしろに
そんなふうに生きてきた僕は
十分に君を傷めつけていた

誰も小さな存在でしかないからこそ
誰かを見殺しにしてきた
そうやって
みんな同じなのだと

僕は卑劣な存在で
君の言い分を耳に入れるまいと
そうやって
痛みをおぼえないでいられてきていた

君がいることをないことに
そんなふうにしてきた僕は
立派に君を傷めつけてきた

二〇二二年　三月　五日　※Facebookより転載 

奥主榮