月映(つくはえ) ヒラノ

2021年11月15日

月映(つくはえ)

田中恭吉、藤森静雄、恩地孝四郎。三人の画学生が作った自刻による木版画と誌の作品集『月映(つくはえ)』


記憶は曖昧で...
東京駅ステーションギャラリーで。

それらは白黒で、けっして傑作ではないのだけれど...
(それが後に教科書に載ることがなかったとしても)
そんな矢先に仲間が結核に。大正の当時なら「死亡」確定、多くの文学者を葬りさってきた例のアレです。田中恭吉が結核に。23歳で他界。
その展示は本当に曖昧な記憶しかなく、大正時代に絵、版画、詩を書くクリエイティブな三人が一致団結し、『月映』という冊子を発行、世の中に何かしでかそうとしていた。そこまでは覚えているのだが、俺としたことが図録を買っているはずなのにそれが見つからない。

無い。
マジかよ?

「この三人で、世界を、」 「変えるんだ!」
そう誓い、互いに金を出し合い、『月映』を刊行、その矢先に一名、死亡確定仲良し三人組が同人誌を作り社会に対して戦おうとしていたのだと思います。いわゆるい結社です。若く勢いがあって、そして理想があった。強く、太く、ブれなかった。

これから先は雑な展開になることをお許し下さい。

まず、だ。23歳で死んでしまう運命、あなたは納得できますか?俺は絶対にイヤだね。当時のその致死率は今のコロナみたいな話じゃない。確実に、〇〇っと逝く。

そんな話ってある?
なぜ僕が抒情詩の惑星でこんな話を書くのか?

仲間が結核だとわかったその日から、彼らの作品の制作速度が恐ろしいほど上がった。めちゃくちゃ書きまくってる。
抗ってる、抵抗してる、訴えてる、戦ってる、撃ちまくってる、逆らってる、残そうとしてる、生き残ろうとしてる

もっと!もっと!もっと!もっと!

青臭い?
田舎臭い?
洗練されていない?

いいや、関係無いね。まったく関係無いね。
全力でアクセル踏み続けたのがすごくわかる。
それは私感では無く作品の制作年代で明確に見て取れる。尋常じゃないペースで作りまっくてる。

そのクライマックスが...
仲間の死だとわかった上でギュンギュンとスピードを上げていく。

それは... 何と言うか...
チキンレースと言うのか...
無謀な、生へ渇望なのか...

とにかく僕はビックリした。
この三人は後世に名を残すべきだ。そう思った。
暖かいを通り越した沸騰した思いが、乱雑な作品群の中に溢れかえってる。これがスリリングって奴なのかと。
それはずっと、ずっと。
僕はこの話が出来ただけでお腹一杯です。

あのスピード感は、あの絶望は、あの...
あれって何なんだよ?

スポ根?そうかもね。
友情?そうかもね。
どうなんだろ?そうじゃないかも。
力?風?勢い?そうかもしれないし、そのどれもが混ざっているのかもしれないし、
僕には説明出来ないよ。あんな体温上がったこと、そうそう無いから。