「ギエロン星獣(ウルトラセブン)」角田寿星
水滴は糸となっていくつかのこまかな溝を描いていった
胚葉の出逢いとわかれ またの出逢い
区切られた増殖し行く部屋そして部屋
早起き鳥がとおくで多分けたたましい
密林の呼気と吸気
立ち昇る大瀑布の脇を這いあがっていく大ヤモリ
水際ではあざやかに透きとおった紫の保護色で
いろどられたカエルが木洩れ陽をあびる
チョウの群れはいっせいに翼竜を擬態した編隊を組み
空が ひろがる
雨をよくはじく皮膚を持った瑞穂のウマは
蒸散する背中から霧をつくり
そうして反転した降りそそぐ草をもくもくと食んでいる
はてない砂原を渡り行く
灌木たちの隊列
風に枝が共振する 歌をうたっている
繫殖の季節になれば
大気中に平衡していたくさぐさの記憶が結合をくりかえし
何重らせんのフィラメントが生死のあわいを行き来しては
プラズマ プリズム
極彩色の墨絵が惑星全土にひろがっていく
ランダムな偶然が偶然を呼び
まだ見ぬ脊椎動物のドクロが浮かびあがりそれは
ここ六億年で二度めの出来事だった
惑星の語り部よ
いのちをつなぐ硫化化合物よ
反物質よ ダークマターよ
もういちどだけ ひと呼吸でも
望郷のうたを奏でられたなら
れるりらしくもせいぎのてっついはあらはばかられ
おさぱきたるあくのていこくをぶちぷろめました
惑星内の熱と分子衝突で超兵器は帰巣本能を獲得する
のぞまれぬ凱旋がやがて果たされる
見渡すかぎり花の咲く静寂の野原だった
雪のように傘のように天使のようにいのちのように
しろい羽毛はつぎつぎと舞いおちた
砕けてしまった惑星の
たったひとりの生き残り
素粒子レベルからの再生能力を持ちそれは
いくつものいのちを連れてきたが故なのか
それが惑星そのものだったのか あるいは
グルーオン フェルミオン グルイーノ
強い力よりもさらに強い力が存在するというのか
いずれも仮説の域を出ない
惑星の過酷な環境では多様な生態系は望むべくもなく
不死の生命体がひとり 棲むだけだった
他の惑星から飛来して羽を休めていたにすぎないのか
惑星固有種であるならば 有機物のまったく絡まない
想像の範疇をかるがる超えるそれであったのか
はっきりしていることはたったひとつ
それの生命活動停止はまちがいなく
それ自身の意志によるものだった
血液は時空のゆがみで沸騰をつづけ
故郷の喪失というあまりにもありふれた事象
いかなる暴力の果ての帰結だったとしても
花に埋もれて
目をとじる
この星の早起き鳥が時を告げた
