「内在ゲバルト」三明十種
2026年08月17日
当時「方舟」と、
呼ばれてゐた建物の部屋で、
あなたは、何人も何人も何人も、
その裡に取り込もうとスル
革ヘルの似合いさうな女であつた。
化粧気の無いソバカスだらけの顔は
夏の夜空をネガポジ反転させたやう
一重のかなり吊り上がつた両の目は
二重にブレて世界が見えてゐるやう
其の偏つた知識の範疇で
生き抜いてきたものだから
会話にはならぬが対象には成ル。
藝術にはならぬが射精には足ル。
愛情にはならぬが心象には遺ル。
当時「方舟」と、
呼ばれてゐた建物の部屋は、
空つぽの本棚。褪せたベルボトム。
花柄の魔法瓶。虻。天花粉。半券。
硬い綿下着。中身違いのLP盤。
ゲルニカのやうな柄のカアテン。
朝日。希硫酸。傾いたテイブル。
あなたが
泣きながらいけた造花。
街に、
私達の
敗北を告げる地鳴りが
白白しく響きわたつたのだつた。
