「傘袋」尾内甲太郎

2026年08月17日

なくしてしまう、折りたたみ傘の
傘袋
小さくてポケットに入る
夕焼けをなくした空の紺色
なくしてしまった、折りたたみ傘の
傘袋
なくしてしまったら
雨の日、トートバッグの
文庫本中巻から下巻にかけて湿る
それで、傘袋を忘れ果て
物語もつながらず
折りたたみ傘も
ポキポキに折れ果て
昼でしかない夜に
シルクロードの片隅
葡萄の樹の下
ポケットから
見つかる、傘袋
雨の降らない邑
音さえも喪う夜に

風の色の傘袋へ
かさかさに干からびた
ことばの骨を容れる





尾内甲太郎

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