「町の文鎮」もり
googleフォトの検索ワードに
おじさん
と打ち込むと
自分の写真がたくさん出てくる
もうおにいさんではないのだ
なぜそのようなワードを打ったか
おじさんを探してた
故郷の小さな町を歩いていた
いつも白いワイシャツ姿
でもおそらく働いていない
左手には使い古したビニール袋 中身不明
右手には晴れの日も雨の日も
差されることのないビニール傘
知らない人
周りの大人とちがうひと
変なおじさん
公園には入ってこないから
フェンス越しに見つめた
尾行したやつが言ってた
家は大きくて草ぼうぼうだと
家族はたぶんいないと
名字は◯◯だと
子どもはけっこう残酷だと
話しかけたら
エリマキトカゲのように
傘をバサッと開いて
追いかけてくるって
こえーっ
笑いながら
フェンス越しに見つめた
いつだって
ソースは不明
おじさん死んだって
お好みソースをかけながら
親が言った
僕は驚いた
かつおぶしは踊っていた
それからだ
僕は学校へ行かなくなった
何かがおかしくなった もしくは
だいぶ前からおかしかった何かに気づいた
どでかいビルに飛行機が突っ込んでいた
冷凍庫でトリケラトプスが眠ってた
傘はずっと乾いていて
かつおぶしは踊るのをやめた
どう考えても
おじさんは町の文鎮だった
おじさんがいなくなって
押さえられていた半紙が
いっせいに風に吹かれた
そこに書かれていた
言葉たちが
四方八方 飛ばされた
希望 挑戦 未来
うた 元気 納税
笑顔 助け合い
友 平成
飛んだんじゃない
飛ばされて
ほら
耕作放棄地の錆びた有刺鉄線や
ドブ川や
靴箱の奥の奥や
県道沿いのチェーン店の駐車場の隅っこで
野垂れ死んだ
知らない人
周りの大人とちがうひと
変なおじさん
そこにあることで
世界のバランスをとっている
石 地蔵 羽根
ベランダの枯れた草花
重心 一点 満点
まだ理解が追いついていない
もう永遠に追いつきそうもない
死をまとった 生業
尊い 無意味
ソース
googleフォトの検索ワードに
町の文鎮
と打ち込むと
AIの混乱がたくさん出てくる
まだここで
この目で
探すものがあるのだ
